アメリカでは、今週から夏時間が始まった。
正直、私はこの制度が好きではない。
メリットを感じられないからだ。
なぜ、こんな制度ができたのだろうか?
この先も(私は帰国予定なので関係ないが)続くのだろうか?
日本では経験できない「夏時間」という制度について調べてみた。
夏時間とは?
夕方明るい時間が伸びる制度
夏時間とは、Daylight Saving Time(DST)とも呼ばれるもので、3月の第2日曜日から11月の第1日曜日の間、時計を標準時間より1時間早める制度のことだ。
時計を1時間早める、と言われても私は最初ピンとこなかったのだが、夕方明るい時間が長くなる、と考えるとわかりやすいかもしれない。

2025年を例に挙げると、
3月9日(日)の深夜2:00が3:00となり、夏時間が始まった。
11月2日(日)の深夜3:00が2:00となり、夏時間が終わる。
スマートフォン、スマートウォッチなどは、電波で自動的に時間が調整されるので、特に自分で何かをする必要はない。
私は今回、たまたま起きたのでiPhoneを見てみたら、1:59→3:00になるのが確認できた。
壁掛け時計や家電の時計などは自動で変わらないので、手動で変更する必要がある。
自動調整のない時代は、新聞、テレビ、ラジオなどで夏時間の開始日と終了日を確認し、前日の夜に手動で時計を調整していたらしい。
個人的にはストレスの塊
私自身は夏時間と標準時間の切り替えを計6回経験した。
結論、あまりメリットのない制度なのではないか、と思った。
育児中の身では、夕方明るい時間が伸びてもいいことはなく、時間変更に伴う身体、精神的ストレスの方が大きいと感じた。
夏時間開始日、通常の睡眠時間を確保するためにはいつもより1時間早く寝ないといけないが、これが意外と難しい。
日曜日の夜、時計では23:00だが、前日まで22:00だったため、肉体的にも気持ち的にも「まだ眠れない」と感じ、結果、夜ふかしをしてしまった。
大人でもこれなのだから、子供が難しいのは当然だ。
子供の方が体内時計に忠実で、通常の就寝時間には眠気を催さず、就寝開始が時計上1時間後ろ倒しになった。
結局、1時間睡眠時間が足りずに月曜の朝を迎えた。
たかが1時間だが、体への負担は実感した。

さらに5~6月ごろになると、ニューヨークでは日没が20:30頃になることもある。
子供の就寝時間にも関わらず外が明るいので、「まだ夜じゃないよ」なんて言って寝てくれず、寝かしつけに時間がかかることも多かった。
標準時間への移行時のストレスもあった。
時計は1時間遅くなるが、子供は体内時計で活動する。
つまり、感覚的には7:00に起きても、時計は6:00を指している。
その日(から3日くらい続く)は1日が大変長く感じられる。
実家への電話をしようと思っても、朝9:00が日本の23:00となるため、長時間は難しい。
10:30頃にはお腹が空き、昼ご飯には早すぎるためおやつが増え、結果昼ご飯をあまり食べられず、残ったご飯を後で食べるなど、食生活も乱れる。
要するに、夏時間というシステムは私にとって、育児ストレスを増幅させたというネガティブな思い出でしかないのだ。
このような制度が、なぜ生まれ、続いているのだろうか?
夏時間の目的と効果
当初の目的は省エネ
元々は、省エネを目的に作られた制度だそうだ。
夏時間がアメリカで初めて導入されたのは、第一次世界大戦中。
石炭や電力が貴重だったため、「日照時間を有効活用し、人工照明の使用を減らす」目的で導入された。
昔の電力消費はほぼ照明であり、電気をつけている時間を減らすことで、省エネにつながっていた。
夕方の活動時間に外が明るいと、照明が少なくて済むので電力消費が少なくなるということだ。
実際に導入当初は、電力消費が5~10%抑制されたそうだ。
恩恵を受けるのは、外食や小売業界、エンタメ業界(レジャー、スポーツ)だ。
夕方の明るい時間が長いと、夜でも外出する人が増えるからだ。
飲食店などでは客足が増え、レジャー・小売業の売り上げの増加は年間数十億ドル規模あるらしい。
また、交通事故が減少するとも言われている。
経済への影響は±0
では、経済効果はどれくらいあるのだろうか?
現代では、わずかにプラスか、ほぼ±0だそうだ。
理由は主に2つだ。
一つ目は、省エネ効果がほとんど期待できないことが挙げられる。
これには、照明の進化、エアコンの普及、ライフスタイルの変化が関係している。
- 照明の省エネ技術の進化:LEDの普及で、そもそも電力消費量が減った。
- エアコンの普及で「夜の冷房使用」が増えた:昼間が長くなると、帰宅後も暑く、冷房の使用時間が増え、結果電力消費が増える。
- 夜も活動的なライフスタイル :夕方が明るかろうが暗かろうが、あまり関係ない。
夏時間による電力削減効果は1%未満、またはエネルギー消費が増えるという研究結果もあるようだ。
二つ目は、健康リスクによる経済損失があることだ。
睡眠不足による生産性の低下や、心臓発作、脳卒中のリスク増加も報告されている。
体調を崩す人が多ければ、医療費も増加するだろう。
その他、システム調整コストや夏時間のない国との取引による金融市場への影響もあるそうだ。
結論、現代ではプラス面よりもマイナス面の方が目立つようになっているようだ。
今後もそのままの見通し
現在は否定的な意見が多い夏時間の制度だが、今後もしばらく続くと考えられている。
理由は、どちらの時間を標準時間にするかの意見が割れているからだ。
州ごとに制定することもできるが、隣接した州との時差が発生すると混乱するため、現実的に考えると、アメリカ全土でどちらの時間を採用するかを決めることになるだろう。
アメリカは広い上に、様々な産業があるため意見が分かれる。
例えば、レジャーや小売産業からは、客足が伸びて経済効果もあるため、通年夏時間にしたいとの声がある。
一方、農業団体からすると、通年夏時間で朝の時間が暗くなり不便だとの指摘がある。
このような各方面からの意見をまとめるには労力がかかるが、アメリカには他の大きな問題もたくさんある。
経済効果があまり見込まれない夏時間の制度にかけている時間はない、というのが正直なところだろう。
実際、2022年に夏時間を通年採用する法案もあったのだが、下院を通過できずに廃案になってしまった。
ただ、最近トランプ大統領が廃止に意欲を見せているようなので、今後の動きにも注目したい。
まとめ
今回は、私にとってはメリットの少なかった夏時間についてまとめた。
省エネを目的として作られたが、現代では省エネ効果はあまり見込まれず、健康や経済への懸念の方が大きい。
廃止の動きもあるようだが、アメリカには他の様々な問題があるため、議論は停滞し、今後も夏時間はしばらく続くと予想される。
文化の違いをプラスに捉えられればいいが、異国の生活は必ずしも楽しいことばかりではない。
もしポジティブに切り替えている人がいたら、ぜひそのコツを教えてもらいたい。
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