渡米してすぐの頃、やたらと気になった音がある。
”サイレン”だ。
ピーポーピーポーという日本で聞きなれた音と異なるからなのか、妙に耳についてしまう。
正直思った。
「うるさい」と。
現地の人はうるさいと思っていないのだろうか?
そこで今日は、ニューヨークのサイレンについて調べてみた。
本当に音が大きいのか?
それとも、私がうるさく感じているだけなのか?
うるさい時感じるのはなぜなのか?
この答えを明らかにする。
結論:物理的にうるさい
ChatGPTを使って調べてみると、日本のサイレンと比べても、物理的に「うるさい」ということがわかった。
このうるささには、音量、音域、音の種類の3つが関係している。
音量:日本より大きい
日本のサイレンの音量は、約90~110dB(デシベル:音の大きさの単位)に対して、アメリカのサイレンの音量は100~130dBだそうだ。
130dBというと、飛行機のエンジン音に匹敵する音量らしい。
日本では、法律で音量は110dB以下と定められている。
一方、アメリカの連邦基準では、音量は110~120dB(測定距離3m)という規定がある。
最大音量は120dB以下とのことだが、距離が近いと大きく聞こえたり、短時間なら例外的に音量を上げて良い(例えば交差点など)という規定があるため、規定よりも音量が大きくなっていることもあるようだ。
要するに、シンプルに音量が大きいからうるさい、ということである。
音域:高周波の鋭い音
アメリカのサイレンの音は、日本のサイレンに比べて高周波の音が多く含まれるため、耳障りに感じやすいようだ。
周波数とは、1秒間に空気が振動する回数を示す単位でHz(ヘルツ)で表され、高周波の音とは、1秒間に空気が振動する回数が多く、より高い音であるということだ。
例えば、女性の声は、男性の声に比べて一般的には音が高く、高周波ということになる。
日本のサイレンの音(ピーポーピーポー)の周波数帯は、1000~2500Hzという比較的中低音に分類され、耳にやさしく聞こえるようだ。
一方で、アメリカのサイレンの周波数帯は3000~4000Hzであり、日本のものと比較すると高音域で耳に突き刺さるような音なのだそうだ。
また、人間の耳は、人の声の周波数帯である200~1000Hzの音は心地よいと認識し、赤ちゃんの泣き声や金属の摩擦音などの3000~5000Hzの音は警戒心を引き起こすと言われている。
つまり、音の大きさだけでなく、音域が高いという事実も、うるさい原因なのだ。
音の種類:コロコロ変わる
日本のサイレンは、大体「ピーポーピーポー」「ウーウー(たまにカンカン)」という2種類程度だが、アメリカでは、3種類以上の音を使い分けている。
アメリカのサイレンの代表的なものは以下である。
- ウィール・ウィール(Wail Wail):
ゆっくりと音程が上がったり下がったりするタイプ。長距離での警告に使用。フォーン、フォーーーン、フォーーーーーンのような感じ。 - イェルプ(Yelp):
短く素早い音の変化が特徴で、市街地などで使用されることが多い。ピョピョピョピョピョみたいな感じ。 - ハイロー(Hi-Lo):
高音と低音が交互に鳴るタイプで、ヨーロッパのサイレンに近い音。ポーピーポーピーという感じ。 - エアホーン(Air Horn):
低く大きな警告音を発するホーン。特に消防車が使用し、渋滞時に強い注意を促す。ブッブッというラッパのようなクラクション。
以下の動画がわかりやすい。※音量注意
(消防・救急・パトカーによっても種類が違うようだが、そこまでは私は興味がなかった。)
日本には、クラクションではなく「緊急車両です、道を開けてください」とアナウンスしている場面もあるが、ニューヨークではアナウンスは聞いたことがない。
様々な音を状況に応じて使い分けることで、注意を促している。
人の注意を引き起こさせる=不快に感じ、うるさいと思いやすい、というわけだ。
また、サイレン関係の動画を見ると、動画で街を歩く人が耳をふさいでいる場面も見られる。
つまり、私だけがうるさいと感じているのではなく、他の人もうるさいと感じている、とも考えられる。
ちなみに車内は、救急隊員や警察官の聴覚保護のため、車内の音圧レベルが制限されているそうだ。
まとめると、
「大きく高い音が、頻繁に変わる」ため、「ニューヨークのサイレンは、日本のよりも実際にうるさい」ということである。
なぜうるさいのか?
ではなぜ、NYのサイレンはうるさくなってしまうのだろうか?
これには主に3つの理由があることがわかった。
うるさくないと届かない
ニューヨークは、街自体がうるさい。
人が多く、会話や電話の声が絶えない。
車やバスもたくさん走っており、エンジン音やクラクションも鳴り響く。
街中では大音量の広告や音楽が流れ、路上の演奏なども頻繁に行われる。
地下鉄が地上に出る場所では、ガタンゴトンやレールと車輪の摩擦音などが響き渡る。
それらの雑音の中で緊急性を伝えるには、大音量でサイレンを響かせるしかないのだ。
また、緊急車両も多く、緊急車両同士が競い合うように音を鳴らす必要があるのも、うるさくなる原因の一つだろう。
長時間の苦痛
音が聞こえる時間が長いのも、うるさいと感じる要因の一つだ。
ニューヨークの街は車が多く、基本的に渋滞している。
緊急車両すらもスムーズに進めないことが多い。
そうなると必然的に緊急車両は、緊急性を伝えつつ、その場に長く留まることになる。
つまり、大音量のサイレンを長時間、聞き続けなければならないのだ。
短い時間なら我慢できるが、不快な音を聞き続けるのは苦痛である。
この時間が、うるさいという感情を助長してしまっている可能性も十分にある。
反響してうるささ倍増
ニューヨークの街は高い建物が多い。
音は、建物の間を反響するため、一つの音が何度もこだまする。
その上、次のサイレンの音も加わり、次第にこだまする音源が増える。
音の迷路と化したニューヨークの街中を、さまよい続けているたくさんの音が重なり合うことで、よりうるさく聞こえてしまうというわけだ。
「未知」である不快感
一方で、日本から来てすぐの頃、「うるさいな」と感じたことにも理由があるようだ。
それは、脳の予測メカニズムによるものである。
人間の脳は、常に「予測」しながら感覚情報を処理している。
そして、その予測と、実際の感覚入力とを比較し、誤差(違い)を修正することで次回の予測の精度を高める、という風に情報を処理している。
その時に、予測と現実との誤差が大きいと不快感や警戒心が大きくなるそうだ。
私なりにわかりやすく言うならば、聞きなれた音楽の演奏中、奏者が音を外してしまったときに「あれ?」と思うようなものだろうと思う。(違ったらすみません)
つまり、緊急車両の音と言えばピーポー、が染み付いている私たちにとって、未知の音であるアメリカの大音量高音域のサイレンが、頻繁に変化しながら聞こえてくることは、脳の予測の範疇を超えており、非常にストレスなのである。
実際、今でもうるさいとは感じるが、以前のように拒否反応というか、苛立ちのような感情は減った気がする。
このように、心理的な側面からもアメリカのサイレンは移住者にとって非常にうるさく感じられるということが言える。
まとめ:耳を塞いで聞いてみて
今日は、ニューヨークのサイレンをうるさいと感じる理由について調べてみた。
結果、実際に物理的にうるさく、それはニューヨークという街の性質上必然であること、さらに移住者にとっては心理的にもうるささを感じやすいということがわかった。
ただ、調べてみたことで、日本にはない多様な音に少し興味が湧いてきた。
音は大きいので耳は塞ぎつつ、「これはどの種類の音だろう?」と考えてみるのも面白いかなと思った。
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