現地で暮らしていると、くしゃみをした際に”Bless you.(ブレシュー)”と言っているのをよく見かける。
日本で暮らしていると馴染みがないが、どのように使えばいいのだろうか?
歴史や宗教的な観点から、何か気を付けなければならない点はあるのだろうか?
由来や、私の実体験からの学び、具体的な対応方法をまとめてみた。
※宗教に関わる記述もあるが、特定の信条に言及する意図はない。また自身の学習のまとめのため、理解が不十分な点もあるがご容赦いただきたい。
Bless youの由来
キリスト教の慈悲の価値観
”Bless you.”は、誰かがくしゃみをしたときに、アメリカをはじめとする英語圏で使われるフレーズだ。
キリスト教文化圏で使われてきた言葉で、「神の祝福を」という意味があるらしい。
なぜくしゃみで神の祝福が必要になるのだろうか?
私が聞いたことがあったのは、「くしゃみをすると魂が体から抜ける(と信じられていた)から」だが、その他にも理由があるようだ。
それは、14世紀ヨーロッパで猛威を振るったペストに関するものだ。
黒死病とも呼ばれたペストは、命を落とす病気だった。
この病気の初期症状の一つがくしゃみであり、くしゃみを聞いた人々が「神の加護を願う」という意味で”Bless you.”というようになったそうだ。
また、キリスト教のトップであるローマ教皇が、ペストの流行を受けて「くしゃみをした人に祝福を与え、神のご加護を願うように」と推奨したという説もある。
キリスト教では、イエス・キリスト自身が、病気の人や社会的に弱い立場の人々を助けたことから、「すべての人が神の愛と救いの対象である」とされ、平等と慈悲が重要視される。
ペストを罹患した恵まれない人も見捨てず、神の祝福を求めることが、キリスト教の影響力が強かったその当時の道徳的な行いであると考えられ、この慣習が広まったのだろう。
その他にも、「くしゃみをすると一瞬心臓が止まる」という迷信から無事を祈るために言われたという説や、悪霊や邪気に関わる説もある。
現代での使い方
マナーとして言った方が無難
現代での使われ方は、そういった宗教的な要素はなく、ただ単にマナーとして使われている。
日本の習慣で例えるならば、くしゃみをしたときに「大丈夫ですか?」と声をかけるようなものである。(日本では声をかけないことも多いが。)
使い方
基本的には、「目が合う距離にいる人」が「くしゃみをしたらすぐに」声をかける。
発音は「ブレシュー」で大丈夫だ。
言われた相手は、”Thank you.”と返すのがマナーだ。
なので、自分が言われた場合には”Thank you.”と返した方がいい。
”Thank you.”の後は何か返事をしてもいいし、そこで終わりでも問題ない。
具体例
実際に生活していると、「これはBless youを言った方がいいのか!?」と悩むことも多い。
私が咄嗟に言えなかった場面や現地の人が使っていた場面の具体例を紹介する。
もし同じような事態に遭遇したら、言うとスマートだろう。
1.行動を共にしていたら言う
英会話クラスで先生の一人がくしゃみをしたとき、もう一人の先生が”Bless you.”と言っていた。
会話や行動を一緒にしているときは、すぐに声をかけた方がいいことを学んだ。
2.目が合う距離なら言う
会話などをしていない場合はどうするか?
目が合う範囲内にいる場合は、声をかけた方がいいと学んだ。
私のお会計をしてくれていた店員さんがくしゃみをしたときに、「これは私がBless youを言うべきなのか!?」と悩んでいたら、通りかかった他の店員さんが声をかけていたからだ。
くしゃみというのは、目が行ってしまう行為で、目が合ったときの気まずさを回避するために”Bless you.”と声をかけるという側面もある。
なので、目が合う範囲でくしゃみが聞こえてそちらを向いたら、言った方がいいだろう。
3.相手が単独なら言う
電車などに一人で乗っている場合、どうすればいいのか?
この場合は「目が合う距離にいるなら声をかける」のが正解のようだ。
スマホを見ながら一人で乗っている人がくしゃみをした。
向かいに座って一人で本を読んでいた全くの他人が、本を中断して”Bless you.”と言っていた。
言われた人は”Thank you.”とにこやかに返して、お互いにまたそれまでと同様の無言の空間に戻った。
私も同様に、一人で乗っているときにくしゃみをしたことがあった。
できるだけばれないようにしたつもりだったが、横に座っていた人に”Bless you.”と言ってもらえた。
このように、相手が単独の場合は、相手がどんな人であろうと声をかけることを学んだ。
よくある(?)質問
聞かれたことはないが、ここまで書いて自分が感じた疑問について触れておく。
みんなに言っても大丈夫?
Bless youの由来はキリスト教であると先述した。
だが、ニューヨークには他の宗教の人もたくさんいる。
宗教的な由来を持つこの表現は誰にでも言っていいものなのか?
答えは「大丈夫」だ。
理由は、先ほども言ったように、現代のアメリカでは宗教的な意味は深く考えず、単なる礼儀やマナーとして使われるからだ。
ただ、相手によっては宗教的な表現に不快な思いをする場合もあるのでその際には”Are you okey?”などの代替表現を使うといいようだ。
ちなみに、”Bless you.”と言われて嫌な顔をしている人は、私は見たことはない。
なので、基本的には”Bless you.”でいいと思う。
無礼に見られる?
誰にでも”Bless you.”と言うのが基本的なマナーだが、言わなかった(言えなかった)ら、相手に不愉快な思いをさせるのか?
答えは、今のところNOである。
ニューヨークは多様性の街なので人の行動に口出しをする人はいないし、自分が言わなくても他の人が言ってくれることが多いので、トラブルになったことはない。
今まで、「マナーがなってない」など言われたり、そういう目で見られたりしたことはない。
ただ、本当にその人と二人きりの空間では、若干気まずい空気になる可能性があるので、言った方がいいと思う。
家族内ではどうする?
私は(夫も)日本育ちなので、外にいる時に家族の誰かがくしゃみをしても何も言わないのが普通だが、現地の人から変な目で見られることはあるのか?
これも答えは今のところNOである。
「そういう文化なのね」と何も気にされないことが多いが、たまに近くにいる他人が”Bless you.”と言ってくれる場合もある。
その場合は”Thank you.”と返す。
だが、行動を共にしている人が言うのが一般的だと知ってからは、外では夫婦で”Bless you.” ”Thank you.”と言い合うこともある。
まとめ:ブレシューでこなれ感
今日は、ニューヨークに住んでいてよく聞く表現のBless youについて由来や使い方を紹介した。
元々はキリスト教から生まれた表現だったが、現在のアメリカでは単なるマナーとして使われており、近くにいる人がくしゃみをしたら、声をかけることが一般的のようだ。
日本では馴染みがなく対応に迷うことがあるが、もし目が合う距離の単独の人がくしゃみをしたら、「ブレシュー」と言うのが無難だ。
だが、言えなくても咎められるようなことは今までなかったので、あまり気に病む必要はないだろう。
ただ、もしニューヨークで、他人のくしゃみに遭遇することがあれば、反応してみることをお勧めする。
”Thank you.”と笑顔で返されると、ちょっと現地に馴染めたような、こなれた気分になるに違いない。
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